体外受精の流れ。採卵から費用のことまで知っておきたい基礎知識

体外受精

体外受精にステップアップを考えたとき、どんな流れでどれくらい通院することになるのか気になりますよね。

お仕事をされている方は特に、仕事を休まなきゃいけないのか、半休でなんとかなるのか、不安だと思います。

 

はじまってしまえば流れに身をまかせるだけなので、案外あっという間なんですが、はじめてのときはわからないことだらけで、終始おろおろしっぱなしでした。

 

私が通っていた病院のスケジュールを思い出しながらまとめてみます。

病院や個人の体の状態によって多少の違いはありますが、大まかな流れは同じです。

これから体外受精に挑む方の参考になれば幸いです。

 

体外受精とは

体外受精は、卵子と精子を体から取り出して体外で受精させ、その受精卵を子宮に戻す方法です。

日本では1983年にはじめて体外受精で赤ちゃんが誕生し、2015年には約20人に1人の赤ちゃんが体外受精で生まれています。

 

自然妊娠と体外受精の違いイラスト

自然妊娠では、卵巣でできた卵子が卵管で精子と受精し、受精卵が細胞分裂を繰り返しながら卵管を通過し、子宮に着床して妊娠が成立します。

 

体外受精は卵巣で卵子を育て、排卵する直前に取り出します。

取り出した卵子に、採精した精子をふりかけて受精させます。無事に受精した受精卵(胚という)は、培養液の中で細胞分裂が進んでいることを確認し、採卵から3〜5日たったころに子宮に戻します。

 

 

こんな人に有効

  • 卵管が詰まっていたり狭くなっている
  • 精子に対する抗体がある(抗精子抗体)
  • 女性の年齢が高い
  • タイミング法や人工授精で妊娠しない

 

 

体外受精(IVF)と顕微受精(ICSI)の違い

顕微受精(ICSI)は、体外受精(IVF)のひとつの手法で、卵子と精子を受精させる方法が異なります。

IVFとICSIの違い

通常の体外受精(IVF)では、ひとつの卵子にたくさんの精子をふりかけて、自力で受精させます。

顕微受精(ICSI)は、顕微鏡を見ながら、ピペットと呼ばれる専用の針で精子を1匹だけ卵子の中に注入します。

 

 

こんな人に有効

  • 精子の数が少ない(無精子症や乏精子症など)
  • 精子が卵子の殻(透明帯)を通過できないなどの受精障害
  • 人工授精や体外受精でも妊娠しない

 

 

 

 

体外受精・顕微受精の流れ

インフォームドコンセント(説明会)

ほとんどの病院で、体外受精に進む場合はまず説明会に出るように言われます。

説明会の内容は、体外受精の仕組みやリスク、スケジュール、費用のことなどです。

 

私が通っていた病院は、夫婦での参加が必須条件だったので、夫と2人で参加しました。病院の指示がなくても、夫婦2人で参加することをおすすめします。

 

体外受精で男性がすることは、採精ぐらいしかないので、やっぱりどこか他人事になってしまう旦那さんが多いのも事実。

だけど、体外受精は本当に大変です。毎日注射を打って、大量の薬を飲んで、麻酔して、採卵して、人によっては痛みがあったり、入院したり…。女性が1人で乗り切るには、心身ともに辛いです。

 

自分で経験しないと実感がわかないのは仕方がないことなので、説明会には旦那さんも参加して「体外受精は2人で取り組む共同作業である」という認識をつけるようにしましょう。

 

有名なクリニックでは、説明会も予約待ちということがよくあります。体外受精をしようか迷ったら早めに確認を。

 

 

排卵誘発

採卵に向けて質のいい卵子を育てることを「排卵誘発」と言います。

排卵誘発にはいくつかの方法があり、年齢やホルモンの値、またはクリニックの方針によって決まります。

 

大きく分けると、排卵誘発剤(注射)を使ってたくさん卵子を育てる「高刺激法」、飲み薬が中心で体の負担が少ない「低刺激法」、薬を使わず自然にできた卵子を取る「自然周期法」があります。

排卵誘発の種類の表

卵子は取れたものが全て受精するとは限らないので、いい卵子をたくさん取ることが成功への近道になります。

そう考えると高刺激法がいいように思われますが、排卵誘発剤を多く使うと体への負担も大きくなります。また、薬の量も増えるので費用も高くなります。

 

低刺激法や自然周期法は体への負担は少ない分、取れる卵子の数は少なくなります。1つでも採卵できて運よく受精して移植まで進められればいいのですが、ひとつも取れなかったり受精しなかったということはよくあります。

 

どんな刺激法がいいのかは、人それぞれ違います。

 

 

刺激法別のスケジュール例

ロング法
ロング法のスケジュール表

前周期から点鼻薬を投与し、採卵周期の生理3日目から排卵誘発の注射を毎日打ちます。

点鼻薬は、採卵まで排卵しないようにするためのもので、1日3〜4回鼻にプッシュします。

 

注射は毎日クリニックに通うか、自己注射か、近くの病院に依頼して打ってもらう方法があります。

採卵2日前の注射のみ、夜間になります。

 

自己注射の場合も、卵胞の発育状況を見るために数回通院が必要になります。

 

 

ショート法
ショート法スケジュール

ショート法は採卵周期の生理開始と同時に、点鼻薬をスタートします。ロング法に比べると採取できる卵子の数は少なくなります。

 

 

アンタゴニスト法
アンタゴニスト法スケジュール

点鼻薬を使わず、アンタゴニストという注射をお腹に打ちます。

点鼻薬は「毎日時間通りに忘れず使わなきゃいけない」というプレッシャーがあるので、それがないだけでも精神的な負担は軽く感じました。

 

ロング法・ショート法に比べて、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりにくいというメリットがありますが、卵胞の成長にばらつきが出ることもあります。

 

 

低刺激法
低刺激法スケジュール

飲み薬を中心に卵胞を育てます。注射がないので、通院回数や費用が抑えられ、体への負担も軽いのがメリット。

採取できる卵子の数は少なめです。

 

 

自然周期法
自然周期法スケジュール

基本的に排卵誘発剤を使わず、自然に卵胞を育てます。そのため通常はひとつしか採卵できません。

体への負担が少なく、質の良い卵子が取れると考えられ、自然周期法をメインでしている病院もあります。

 

 

 

採卵、採精

卵胞(卵子が入っている袋)が20mmくらいまで成長すると、排卵が近いので、排卵する前に卵子を取り出す「採卵」を行います。

 

採卵は、経膣エコーで卵胞の位置を確認し、針を刺して卵胞内の卵胞液と卵子を吸い取ります。通常は麻酔をしますが、自然周期法などで取れる卵子が1〜2個の場合は無麻酔のときもあります。

 

採卵で卵子が取れたことを確認して、男性は採精します。

当日クリニックに行けない方は、自宅で採取したものを女性が持参するか、あらかじめ精子を凍結しておく場合もあります。

 

採卵は通常半日で終わりますが、麻酔をしたり痛みが出たりすることもあるので、仕事は休んだ方がいいと思います。

 

 

採卵の痛み

全身麻酔(静脈麻酔)の場合は、寝ている間に終わるので無痛です。

無麻酔の場合でも、膣の中は痛みに鈍く、針も細いのでそれほど痛くないです。

 

はじめての採卵はすごく怖くて不安になりますが、大丈夫です!

ほとんどの人は痛くないです!

 

ですが、痛みがある人もまれにいます。私がそうなんですが…。

 

痛みの程度は人によって違いますが、取れる卵子の数が多くなると痛くなるかもしれません。

卵胞がひとつしかない場合は針を1回刺すだけですが、20個あれば20箇所に針を刺すことになるので、まぁ、多少の痛みは仕方ないですよね。

 

私の場合、18個採卵できたときは、麻酔から覚めたときに「ちょっと強めの生理痛」くらいの痛さがありました。

30個以上取れたときは、びっくりするような激痛でしたね…。のたうちまわって、嘔吐もありました…。

だけど、ここまで痛みがある人はまれなケースだと看護師さんが言っていたので、あまり参考にしないでください(^^;

 

 

受精(媒精)

採卵した卵子と、採精した精子を受精させることを「媒精(ばいせい)」と言います。

媒精の方法は、上記で説明したように、卵子に精子をふりかける体外受精(IVF)と、卵子にひとつの精子を注入する顕微受精(ICSI)があります。

ICSIの画像

 

ちなみに、採卵で取れた卵子の半数を体外受精、残りの半分を顕微受精することを「スプリット法」と言います。

 

 

胚培養

正常に受精した受精卵(胚と呼びます)は、1日〜5日かけて培養します。

受精卵の分割の流れ

胚は、2分割胚、4分割胚、8分割胚と細胞分裂を繰り返しながら成長します。

4〜8分割胚になった胚を「初期胚」と呼び、子宮に戻すことができます。ここからさらに培養すると、「桑実胚(そうじつはい)」を経て、「胚盤胞(はいばんほう)」になります。

 

自然妊娠では、卵管で卵子と精子が受精し、卵管の中を通りながら、子宮にたどり着きます。

卵管の中を通過しているときの胚は、分割を繰り返している「初期胚」の状態で、子宮に着くころに「胚盤胞」になります。

 

自然妊娠と同じように、胚盤胞を子宮に戻した方が、妊娠率は高くなります。

だけど、体外で胚盤胞まで育てるのは難しく、初期胚から胚盤胞になる胚は30〜40%ほどです。(年齢にもよる)

 

 

胚移植

胚を子宮内に戻すことを「胚移植」と言います。

初期胚を戻す「初期胚移植」の場合は採卵の3日後、胚盤胞を戻す「胚盤胞移植」の場合は採卵の5日後に行います。

 

培養士から胚の状態を説明してもらい、処置室に移動して、胚移植を行います。

基本的に麻酔はありません。

膣から細いチューブのカテーテルを入れ、子宮の奥の方に胚を置きます。

 

痛みはありませんが、子宮の角度によってはカテーテルが入りにくく、少し「イテテ」となることはあります。

力を抜いてリラックスしていれば痛くないんですが、はじめはやっぱり緊張しますよね。

 

子宮に戻す胚は、多胎妊娠(双子や三つ子)を避けるために、通常は1つとなっています。

 

双子はかわいいけど、単胎妊娠に比べて流産や早産のリスクが高くなります。

35歳以上の人や何度胚移植しても妊娠しない人は、2個戻すこともあります。

 

胚移植自体は15分ほどで終わり、その後リカバリールームで30分〜1時間ほど休んで帰ります。

 

胚移植当日の流れとスケジュール(自然周期)

2018年5月29日

 

 

新鮮胚移植と凍結胚移植

採卵と同じ周期に移植することを「新鮮胚移植」と言い、胚を凍結して別の周期に解凍して移植することを「凍結胚移植」と言います。

 

排卵誘発剤を使って卵子を育てると、卵巣が腫れることがあります。その場合は、胚を凍結し、翌月以降に移植をします。

また、子宮内膜が薄くて着床する確率が低い場合も、凍結胚移植になります。

 

名前だけ聞くと「新鮮胚移植」の方が良さそうに感じますが、実は「凍結胚移植」の方が妊娠率は高くなります。

 

 

 

移植後の過ごし方

移植後は、子宮内膜を厚くしたり着床を助けるために、黄体ホルモンを補充します。薬は注射、飲み薬、座薬があり、病院によって異なります。

私が通っている病院では、移植した当日に「プロゲデポー」という注射を打って、「デュファストン」という薬を妊娠判定の日まで飲みます。

「プロゲデポー」は筋肉注射で肩の近くに打つのですが、不妊治療中の注射でこれが一番痛いです。

 

移植後は、激しい運動やお腹に力がかかる掃除などは最小限にして過ごします。病院では「お姫さま生活」と例えていました。

「安静にしていれば妊娠する」というわけではないけど、もしダメだった時に後悔しないためにも緩やかな生活を心がけましょう。

 

 

妊娠判定

胚移植から10日〜2週間後、尿検査や血液検査で妊娠の有無を判定します。

妊娠すると「hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)」というホルモンが分泌されます。

hCGは着床したときから増えはじめ、8週から12週ごろにピークを迎え、その後は一定値を保ちます。

 

このhCGの値で妊娠しているかどうか判定します。

 

妊娠判定日は妊娠4週目にあたるので、hCGの値は20〜500mIU/mLくらいです。個人差はありますが、だいたい100以上あればとりあえず安心という病院が多いようです。

 

妊娠判定(早期妊娠診断とhCG値の関係)|はらメディカルクリニック

 

市販の妊娠検査薬はhCGが50mIU/mL以上で反応します。胚移植から10日以上経っていれば、検査薬でも反応するので、いきなり病院で結果を聞くのが怖い人や早く結果が知りたい人は、試してみてください。

 

 

体外受精にかかる費用は約30〜60万円

体外受精は保健適用外なので、全額自費診療になります。

金額は病院によって大きく異なりますが、一度の採卵で20〜40万円、胚移植が10〜20万円くらいが目安です。

 

また、普通の体外受精(IVF)か顕微受精(ICSI)かでも費用が変わってきます。

 

私が通っているクリニックでは、顕微受精は10個までは10万円、20個未満が15万円、それ以上が20万円でした。

それと合わせて、採卵で30万円、凍結胚移植で20万円、排卵誘発の注射や薬、診察代、胚の凍結保存にかかる費用など、合計で80万円近くかかりました。

(受精卵がたくさんできたので、顕微受精代と胚の凍結保存代が結構大きかった。)

 

一度で妊娠すればいいですが、2〜3回と繰り返すとあっさり100万円を超えてしまいます。

破産しないように、前もっていくらまでなら治療にかけられるか、夫婦で話し合っておいたほうがいいですね。

 

高度不妊治療にかかる費用は平均190万円以上!|PRTIMES

 

 

体外受精は助成金があります

体外受精は高額ですが、助成金を活用すれば負担は軽くなります。

 

自治体により多少違いはありますが、初回の採卵は30万円、2回目以降は15万円、凍結胚移植(採卵なしで移植だけ)は7.5万円がもらえます。

 

年齢制限や所得制限があるので、当てはまるかしっかり確認しましょう。

 

不妊に悩む方への支援について|厚生労働省

 

助成金の申請は、妊娠判定が出た後で病院に書類を作成してもらうことになります。その書類と、領収書や所得証明などを持って、指定の窓口(役所とか保健所)に申請します。

 

 

体外受精の妊娠率は約30〜40%

日本産婦人科学会の発表では、体外受精や顕微受精で胚移植をした時の妊娠率は25〜30歳で約40%以上、35歳は約38%、40歳では約25%になります。

胚移植の妊娠率のグラフ

参考:日本産科婦人科学会

 

実績や妊娠率を公開している病院もあるので、自分が通う病院のホームページも確認してみてくださいね。

 

 

体外受精のリスク

体外受精で生まれてくる赤ちゃんは、自然妊娠で生まれてくる赤ちゃんと何も変わりません。

障害を持って生まれてくる確率は自然妊娠のときと同じと言われています。

 

双子になる確率が増える

一度に2人以上の子供を妊娠することを「多胎妊娠」と言います。

自然妊娠での多胎妊娠の確率は約1%ほどですが、体外受精での多胎妊娠率は約3%になると言われています。

双子の写真

多胎になると、流産や早産のリスクが高くなります。「双子に安定期はない」と言われるほど、妊娠中も安心できません。

そのため、多胎妊娠を防ぐために、子宮に戻す受精卵は原則ひとつだけとなっています。

 

 

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる危険

採卵時の排卵誘発で、卵巣が腫れて腹水がたまることがあります。

ほとんどの場合が軽症で、安静にしていれば自然に治ります。

 

重症になると卵巣が8〜12cmまで大きく腫れ(通常は2〜3cm)、腹水が胸の方までたまります。

お腹が張って苦しく、体重が増え、呼吸が苦しくなります。このような状態になると、入院が必要になります。

 

また、血管内の水分が少なくなっているので、「血栓症」を起こしやすくなります。

 

妊娠するとhCGが分泌されるので、症状が重症化しやすくなります。

そのため、採卵時に卵巣の腫れが見られた場合は、新鮮胚移植はせず、受精卵を凍結して別の周期に胚移植を行います。

 

私は3度の採卵で2度、OHSSで入院しています。

まさか不妊治療で入院することになるとは思ってもいなかったので驚きました。

入院までする人は少ないみたいですが、採卵で取れる卵子の数が多い人は要注意です。

 

OHSSイメージ

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)で入院。症状のピークと治療法について

2018年5月21日

 

 

体外受精は大変だけど、やってみる価値はある

個人の治療歴や体の状態にもよるので、安易には勧められませんが、私は体外受精にすすんでよかったです。

1度目の胚移植で妊娠したことで、「私も妊娠できる体なんだ!」という自信が持てたし(流産してしまいましたが…)、タイミング法でやみくもに頑張っている時より、確実に前進しているような気がします。

失敗した時のダメージは大きいですが、できる限りのことはやってみようという気持ちで挑んでいます。

 

もし、体外受精へのステップアップを迷っている方がいたら、前向きに検討してほしいです。